実用されるAIとは?

実用されるAIの重要性

生成AIの進化が社会を大きく変えるインパクトを持つのは明らかです。
しかし、そのポテンシャルの大きさが故に、how先行かつ手当たり次第なAI開発が行われているのも事実です。「まずは作る」ことが大事なのはもちろんですが、せっかく作っても実用されない例が多いのも課題です。
生成AIへのポテンシャルの大きさから、少々実用できないことがあると、「AIってまだまだ使えないじゃん」と過剰にネガティブにフィーチャーされがちです。もちろん、まだまだできないことも多いですが、開発の方法や活用方法に問題があることが多いのもまた事実。きちんと正しいアプローチで開発することが大切です。

miiboでAI開発をするにあたり、なるべく実用されるAIが作れるよう、本チャプターでは「実用されるAI」について考えます。

実用されるAI = 「溶けこむAI」

miiboでは、実用されるAIを「溶けこむAI」と表現しています。作ってもなかなか使われなくなってしまうAIの多くは、利用への心理的な距離の遠さが要因になっていることがあります。

・身近にあり、気軽に話しかけられる
・コンテキストを共有できている

こういった要素を持っているAIは、長く実用されやすくなります。
また、始めから完璧ではなくても長く使われる環境が整っていると、その後のアップデートもされやすく、改良されていく循環が生まれやすいです。AIをどれだけ身近な存在にし、気軽に話しかけられる存在にできるかが重要です。どこか遠いところにいる存在ではなく、同じチームや環境にいる頼りがいのある仲間としてAIが存在し、すぐに話しかけられることが重要です。それが、生活や仕事に「溶けこんだAI」であります。



Webサービス上で会話ができるChatGPTは非常に便利ですが、まだAIに詳しいユーザー以外に定着しきっていません。コンテキストを共有するのに手間がかかることや、わざわざChatGPTのWebサービスに話に行き、質問を考えるのにハードルがあることが要因になっていると考えられます。自然と利用されるAIは、溶けこみ、活用や改善のハードルが低い状態に仕上げることが重要なのです。


溶けこむAIになる条件




「溶けこむAI」になる条件を、miiboでは4つの要素を網羅していることと定義しています。

  1. 知能
  2. 知識
  3. 共感
  4. 個性

「知能」を持つAI



AIは知能を持っています。知能はいわゆる「LLM (大規模言語モデル)」が該当します。これがAIのコアとなる要素です。大量の学習データを元に形成された「知能」は、様々な課題に対して何らかの答えを導き出します。GPT-4などの高度な知能を備えたAIは、高度で示唆に富む回答を返します。

しかし、知能だけでは状況ごとのコンテキストを正しく解釈できていなかったり、柔軟な応答ができなかったりと、社会性や精彩を欠きます。また、LLMの仕組み上、アンコントローラブルな側面が課題となります。


「知識」を持つAI



知能のレイヤーを「知識」レイヤーで覆うことで、AIはドメイン固有の知識やルールを獲得します。具体的な技術要素としては、RAGやシナリオ、ルールベース応答などの機能が該当します。(詳細は本書で解説します。)
それにより、AIの与えられた目的や役割を得て、その遂行のために行動することができるようになります。正しく知識を扱えないと、実用されるAIにはなり得ません。様々な知識を適切に与えたり、定期的にアップデートして上げる必要があります。

知識によって役割を遂行できるようになりますが、この2レイヤーのみだと頭でっかちな存在になってしまい、人々の拒絶を産んでしまいます。これだけでは十分な社会性を得たとは言えません。


「共感」するAI



知識をもったAIが「共感」をすることができると、よりパーソナライズされたユーザーへのコミュニケーションを取ることができます。共感ができるということは、相手のことを理解しコミュニケーションが取れるということです。

例えば、カスタマーサポートを行うAIであれば、お客様が何に困っているのかを正しく把握し、その課題に合わせてサポートを行ってあげるなどです。相手のことを理解しコミュニケーションが取れることは、AIへの人の信頼を醸成し、頼りたくなる存在にします。miiboの「ステート」機能などが該当します。

「個性」を持つAI



一番外側のレイヤーは、「個性」です。人との距離感を縮め、AIをより身近な存在に馴染ませるのが「個性」です。
個性は下記のような要素の集合です。

・見た目 (チャットボット、AIアバター、音声デバイスなどのユーザーインターフェース etc...)
・声
・口調
・生息場所 (Slack、LINE、Webサイト、オフライン空間 etc...)

どんな見た目や声をしているか、そしてどこで活動しているか(生息場所)といった最もユーザーから見える「インターフェース」となるレイヤーです。前述の3つの要素を、この個性のレイヤーで覆って上げることで溶けこむAIが完成します。



溶けこむAIを開発するmiibo



miiboはこの4つのレイヤーを網羅した会話型AIを構築する機能を有しています。ただLLMに専門知識を与えるだけでなく、しっかりとこの4つの要素を網羅することが、実用されるAIを構築するのに重要です。

本書のmiiboの解説を通し、皆様がmiiboで「溶けこむAI」の開発にチャレンジいただけることを祈っております。